和樹の言葉に、わけがわからず慌ててドアを閉める二人。


外からはノックや、ドアノブをガチャガチャする社員たち。


「絶対開けんなよ、お前ら!」


とりあえず、和樹の言いなりになる二人。


「さぁ、助けは来ねぇぞ。じっくりと説明してもらおうか」


和樹が父に言う。


「何の話だ?」


「とぼけんな!慎一の話だよ!あんただろ、勧誘したのは!」


じっと睨む和樹。


「……仕方がないだろ。お前には、やはりこの会社を継いでもらいたいんだ」


「継ぐ気はねぇってあれほど言ったろ!」


「だから、こうした。バンドメンバーを一人引っぱれば、お前は大会に出れない。ここは大手だ、そんな会社からオファーがくれば、断る理由などない。将来安泰なんだからな。……この会社を継げ、和樹。お前は頭が良くキレる、お前なら」


「うるせぇ、継がねぇって言ってんだろ!俺は音楽で食っていくんだよ!親父も納得しただろうが!」


「現実を見なさい、和樹!お前はギターの腕前は良くないだろう。そんな熱い想いだけで成功するとでも思っているのか?だいたい例え今回の大会で優勝しても、成功するとは限らない。そんなことに精を上げている暇があったら」


その瞬間、和樹の拳が父の左頬を捕らえた。


パンッと響き、その場に倒れこむ父。


「……話になんねぇよ、このバカ親父!」