「慎一は今朝、お前の親父さんの会社に行った」


「……え？」


「どういうことだ、これ？なんで親父さん、お前に何も言ってねぇんだ？お前のバンドに対しての気持ち、親父さんが知らねぇ訳ねぇだろ？」


「……」


「何か言えよ、和樹」


「バカヤロー、なんで早く言わねぇんだよ！」


突然そう言い、ロビーを出て自転車にまたがり猛スピードで走りだす和樹。


「どうしたんだよ、和樹！」


和樹の突然の行動に、慌てて聡、竜太も自転車にまたがりついていく。


和樹の速さは尋常でなく、ついていくだけで必死の竜太、聡。


和樹が止まった場所は、明坂商事の前だった。


自転車から降りた和樹は、乱暴に自転車を倒してビルの中へ入っていく。


息を切らしながら、それに続く聡と竜太。


「どうしたんだよ、急に？」


竜太の問いかけに答えず、スタスタと早歩きで廊下を歩く和樹。目を大きく開いている。


社長室の前に着くと、勢いよくドアを開けた。


「親父！」


そこには、白く長い髭が特徴的な、和樹の父が座っていた。


「どうした、何の騒ぎだ、和樹」


スタスタと父の前に行った和樹は、突然胸ぐらをつかみ上げる。その行動に、驚く竜太と聡。


「どういうことだ！」


怒鳴り声を上げる和樹。そこに、秘書らしき女性や社員が駆け集まってくる。


「竜太、聡！ドア閉めろ！」