聡子は聡の前にカレーを置いた。スプーンを受け取ると、皿を持ってカレーをかきこんだ。


食べ終わると、再び部屋に戻る聡。


携帯電話を開くと、もう一度竜太の番号を押す。


押したところで、聡の手は止まった。


「まぁ、どうせスタジオで会うから、いいか……」


と、電話を掛けるのをやめる。


練習の時間まで綾とメールすることにした。


『綾。なんか、ちょっと不安になってきたよ……』


『ここまできて、また弱気にならないの。』


『そうだね。ところで、なんで綾はあさってまでしかメールできないの?』


『そういう決まりなの。本来はメールなんてできないんだよ。』


『そっか。そりゃそうだもんな。』


そう送ると、あさってまでしかメールができないという事実に、急に一通一通が大事に思えてきた。


練習ギリギリまでメールをすると、聡はスティックを持って家を出た。


『じゃあ、行ってくるよ。』


『うん、頑張ってね。』


スタジオに着くと、チラッと中を確認する。


竜太と和樹がロビーにいる。急に緊張してきた聡。


フーッと息を吐くと、聡は扉を開けロビーに入った。


「おす、聡」


相変わらずな調子の竜太。和樹は、何やら機嫌が悪そうだ。


「おす。……どうしたんだ、和樹?」


聡が和樹に声を掛ける。


「どうしたじゃねぇよ、慎一だよ!まだ風邪ってどういうことだよあいつ、練習はもう今日しかねぇんだぞ!」