『でも、待ってても何も始まらないよ。そうするしか、もう手はない。』


そうメールすると、時計の針は正午を回っていた。


再び一階に降りると、聡は食卓に入った。


「お母さん、ご飯」


「はいはい」


聡子はすでに鍋に火をつけていた。カレーの匂いがする。


待っている間に、竜太に電話を掛けた。


プルルルル、プルルルル……


ガチャッ


「おす、聡。どうした?」


竜太が電話に出る。さっきまで寝ていたのか、少し鼻声だ。


「今日、慎一のところに行った。慎一の後をつけたんだけど……慎一は、和樹の会社に行った」


「どういうことだよ」


「わかんねぇけど……とりあえず」


「聡?慎一君、どうかしたの?」


その会話を聞いていた聡子が割って入る。


聡子がいることを忘れていた聡は、驚いた様子で「とくかく、スタジオでな」と言って慌てて電話を切った。


「お母さん、電話してんのに横から入ってこないでよ」


ふて腐れた様子の聡。


「後をつけたって言ってたけど……どうしたの、慎一君?」


「なんでもないよ」


ぶっきら棒に答える聡。


「だったらいいけど……」