わけがわからず、しばらくそのビルの前で突っ立っていた。


数分後、封筒を持った慎一が出てきた。


それに気づき、急いで身を隠す聡。


「これか、和樹に言えない理由って……」


再び、自転車を漕ぎ出す慎一。それについていく聡。


向かった先は、慎一の自宅だった。慎一は家に帰ると、そのまま出てこなくなった。


「なんだ、和樹の会社に面接に行ったのか?」


ここに居ても仕方がないので、自宅へ向かいながら綾にメールを送ることにした。


『慎一、和樹の会社に行ってた。どういうことだろ?』


『じゃあ、和樹君のお父さんは事情を知ってるってことになるよね。なんで和樹君には、慎一君のこと秘密なんだろ?』


『そうだよな。だいたい、親父さんが知ってるんだったら、息子に言ってるはずじゃないのか?』


『でも、和樹君には秘密……ってことはつまり、和樹君にバレたらマズいことでもあるのかな?』


『わかんないけど……』


聡は自宅に着くと、玄関を開けた。


「ただいまー」


「聡、朝からどこ行ってたの?」


洗い物をしていたのか、手を拭きながら言う聡子。


「ちょっとね」


適当に答えた聡は、二階に上がり自分の部屋に入った。


『決めたよ、綾。俺、慎一のこと、和樹に言ってみる。』


『いいの?』