朝十時に起きた聡は、着替えると朝ご飯も食べずに慎一の家に向かった。


慎一の家の前に着くと、丁度慎一が玄関から出てきた。今日もスーツ姿だ。


「慎一!」


思わず声を掛ける聡。ビクッとする慎一。


「……どうしたの、こんな朝から?」


慎一が冷静に聞く。


「え、いや……」


そういえば、何を話すか全く考えていなかった。


「僕、急ぐんだ」


そう言って、自転車に乗り走り出す慎一。だんだん見えなくなっていく。


ボーッと、それを眺める聡。


「あ、そうだ」


慎一がどこに行くかわかれば、少しまた手掛りが見つかるかもしれない。そう思った聡は、急いで慎一の後を追った。


尾行がバレないようある程度距離を置いていると、曲がり角を曲がったところで見失ってしまう。


「あれ?どこ行ったんだよ、あいつ……」


キョロキョロと探していると、あるビルに慎一が入っていく姿を発見する。


「あれ?あそこって……」


急いでそのビルの前に行く。


ビルを見上げると、大きな白い看板に『明坂商事』と書いてある。


「和樹の親父さんがやってる会社じゃん……」