そう言うと、階段を静かに上りだす聡。


部屋に着くと、布団の上に倒れるように転がりため息をついた。


ボーっと天井を見つめ、携帯電話を取り出しメールを送った。


『あーあ、全国大会の日が終わるともう楽しいことなんてなくなるな……』


『どうして?』


『だって、綾とは全国大会の日までしかメールできないだろ?』


『そんなこと言わないで。きっと良いことあるよ。』


『いっそのこと、もう自殺でもして綾のところに行こうかな……』


『バカ!』


『……嘘だよ。今まで親にさんざん迷惑かけたからな……親孝行するまでは死ねないよ。』


そうメールをしているとき、突然携帯電話が鳴った。竜太から着信だ。


「なんだよ、もう」


そう呟き、通話ボタンを押した。


「もしもし、なんだよ竜太?今忙しいん……」


「もしもし、聡!」


竜太のもの凄い声が聞こえる。


「なんだよ、うるせーな……」


驚いた聡は、電話を少し耳から離した。


「受かったぞ!おい!受かった!」


竜太の弾んだ声が聞こえる。


「なんだよ、何の話だよ?」


突然良い予感がして、布団から起き上がる聡。


「スペシャルシートだよ!俺たち、全国大会進出だ!やったぞ!」


思わず手が震え、下唇を噛み締める聡。


目の前が涙でぼやけて見える。


「本当かよ?冗談とか、無しだからな!」