『いつまでも天国で見てるよ。私は、聡の音楽をやってる姿が見れるだけで幸せだよ!』


『ありがとう……』


綾に勇気づけられ少しだけ元気になった聡は、再び立ち上がり家に向かって歩きだした。


『わかった。俺、これからも音楽を続けるよ。綾、ずっと見ていてね。』


『うん、もちろん!』


家に着いた聡は、玄関のドアを開けた。


「ただいま」


食卓に行くと、聡子がいた。


「おかえり。で、どうだった、今日?」


「……ダメだったよ」


俯いて答える聡。


「……そう」


なんて声を掛けていいかわからず、聡子はそう言った。


「でも……まだスペシャルシートがあるんじゃないの?」


愛想笑いで聞く聡子。


「あるわけないよ……あれは、本当に特別なときだけだよ」


「そうなの……」


少しの沈黙。俯く聡子。


「あ、夕飯は?」


顔を上げ、聡に聞く。


「食べるよ。夕飯できたら呼んで、部屋にいるから」


そう言って二階へ上がろうとする聡。


「あ、聡……」


再び声を掛ける聡子。その声に立ち止まる聡。


「わかってるよ。俺……就職する。音楽は……趣味で続けるよ」