「いや……俺もメールしながら見てたし、竜太も途中、寝てたろ……気づかなかったんだよ……」


聡が言う。再び重い沈黙。


「帰ろうぜ……」


突然席を立つ和樹。それに続く三人。


「……これから、どうすんだよ?」


竜太が言う。


「……解散……するしかないな……」


和樹が言う。泣き出す慎一。


駅に着いた四人は、切符を買い電車に乗った。


電車では一言も喋らず放心状態のまま、電車のゴトンゴトンという音だけが無機質に鳴り響く。


地元の駅に着くと、竜太が三人に向かって言った。


「じゃあ、みんな……元気でな。今日は楽しかった。今まで楽しかった、ありがとう」


その言葉で、初めて自分が落ちたことを実感する聡。


堪え切れず、大粒の涙が両頬を這った。


竜太が家に向かって走りだす。それに続く和樹と慎一。


駅には聡だけが取り残された。


「こんなことって……あんのかよ……」


横に立っていた柱を思い切り殴る。


ガンという音に、通行人が聡をチラチラ見る。


その場に崩れた聡は、携帯電話を取り出し綾にメールを送った。


『綾……落ちちゃったよ……』


再び涙がこぼれる。


「なんでだよ!綾が見てたんだぞ!どこのバカだよ、審査した奴らは!」


人目を気にせず叫ぶ聡。そのとき、綾から返信がきた。


『残念だったね。私も悲しい。』


『ごめん……綾……メジャーデビュー……叶えられなかった……』