そう呟いた聡は、『綾』へメールを送った。


『……なぁお前、天国から俺のこと、見てるんだよな?』


送信すると、自分でもわからずなぜか早足で歩き出した。


家が見えてきた頃、携帯電話が鳴った。


『もちろん。昨日の竜太君とのやりとりだって、天国から見てたから知ってたんだよ。』


その場に立ち止まり、メールに返信する。


『じゃあ、答えてみろ。俺は今どこで何をしてる?』


送信ボタンを押した指が小刻みに震えていることがわかった。


なぜか、心臓が速くなる。


一分後、メールは返ってきた。


『コンビニから帰る途中、私にメールくれてる。』


そのメールを読み終えると同時に、聡は勢いよく辺りを見回した。


しかし、人影はない。


「え……じゃあ……まさか……」


息が詰まる。足がガクガクする。震えて文字が打てない。


それでも懸命にメールに返信した。


『じゃあ……俺が綾に告白した言葉を教えてくれ。』


なんだ、これは……誰かに見られている様子はない。


ましてや、昨夜だ……家の中のやりとりまで、知っている……。


メールはすぐに返ってきた。


『「好きだ」って言おうとしたのに、噛んで「ちゅきだ」って言った。』


そのメールを見て、まぶたが熱くなるのがわかった。


『なんで、綾しか知らないこと、知ってんの?』


『綾だからだよ。』


涙が溢れてくる。


『綾……本当に……綾なのか……』


『嬉しいな。やっと信じてくれたの?』


「綾!」


聡はその場でそう叫び、持っていた携帯電話を力いっぱい抱きしめた。