「バカたれ、ちゃんと占っておるわ。ほれ、お前さんの手も出してみぃ」


老婆は女の手を取ると、再びゆっくりと手相をなぞった。


「こ、これは……」


「え?どうしたの?もしかして、私も今が旬?」


女は笑顔で老婆に聞く。


「生命線が……切れている……こんな手相は初めてだよ……」


老婆が深刻な面もちで言う。


「ここで切れているということは……お前さん、今日死ぬかもしれん……」


老婆は怯えて言った。その言葉に、表情が曇る女。


「おいババア、さっきちょっと嫌味言われたくらいで、それはねぇんじゃねぇか?」


男が少し怒って言う。


「いや……本当なん……」


「冗談が過ぎるぞ。俺らが高校生だからって、ナメてんのか?いい加減にしろ!」


男は両手で老婆の胸ぐらをつかみ上げた。


「いいよ、ただの占いじゃん」


女が男を制す。


「まぁ……そうだけど……」


男は老婆から手を放した。


「行こ」


女は男の腕を引っ張って、老婆から離れた。


「畜生、縁起の悪い……」


「もう、いいじゃん。たかが占いなん……」


そのセリフを言い切る前に、女は急にバタリと倒れた。


「……え?ちょっ……おい、おい!どうした!」


男は慌てて女を抱き上げるが、女はピクリともしない。白目をむいていて、青ざめている。


「まさか……」


男は必死に辺りをキョロキョロとする。


通行人が、すでにその状況に気づいて遠目で見ていた。


「誰か!救急車!救急車を!」


女はそのまま、帰らぬ人となった。