「面白かったね、映画!」


と、女は笑顔で男の腕に抱きついた。


「そうだな、また来よっか」


男は女の頭を撫でながら言った。


夜の街。空は雲一つない星空で、街灯が規則的に並んでいる。


男と女は映画館を出ると、アーケード街に出た。


「これから、どうする?」


女が聞いた。


「そろそろ、帰ろっか」


「えぇー、もうちょっと遊ぼうよー」


と、女は駄々をこねて男の腕を揺さ振る。


「だって、もう9時だよ?またお前の親父さんに怒鳴られちまうよ……」


「あ、占いだ!ねぇ、最後に占いやって行こうよ!」


「占い?」


男は女が指差した方向に目をやると、そこには黒い服を着た老婆が一人と、黒いシートがかかっている机に『占い、千円』と白い字で書かれたダンボールが置かれていた。


「えぇー、あれ、何か胡散臭くない?」


「いいじゃん、いいじゃん!ねぇ、やろー?」


「しょうがないなぁ」


「やった!」


女はスキップで、老婆の所に駆け寄った。男も女に続いた。


「すいません、占ってもらえますか?」


女は老婆に言った。


「はい。一人、千円ね」


「え、二人で千円じゃないの?じゃあ二人で二千円になっちゃうじゃん……」


値段に不満を感じた女が言った。


「まぁ、いいよ。俺、バイト代入ったばっかだし」


そう言って、男は老婆に二千円を差し出した。


「まいどあり。では、今から占いを始めようかの。まず、男性の方。手を拝見させてくれんかの?」


「はい」


男は老婆に手のひらを見せた。老婆は男の手を取ると、ゆっくりと手相をなぞった。


「お前さん、長生きすると思うよ。それにこの一年、何もかもが順調に進む。最高の時期だね」


「ふーん。誰にでもそんなこと言ってんの?」


女はニヤニヤしながら、老婆に水を差す。