当日。
音と人でごちゃごちゃで、人と待ち合わせなんて無茶だとか思えた。
「こっちー!」
日菜が必死に手招きするけど、微妙に遠くにいる翔大たちは気づきそうにもない。
少し歩いただけでも酔ってしまいそうな人混み。
本当はめっちゃ苦手だったりするんだけど……
て、言ったそばから日菜がいないことに気付く。
も、ほんとついてない…。
翔大の私服が見たいだけな
「美加!?」
目の前の人混みから顔を出したのは、紛れもなく翔大。
「しょう…」
「探したんですけど!!」
思いっきり腕を引かれて、すいた通りへ抜けた。
少し切れた息に焦りが見えた。
「ご、ごめ…」
翔大の強ばった顔に焦りを感じた。
「いや、謝んないでよ
ただ心配だったの、ね?」
促すように、今度は優しく笑う。
可愛い私服に割増された笑顔。
それはずるい位あたしの心を奪っていった。
…さっき、名前で呼んでくれたことに今更気づいて、Wに感動。
「あいつらんとこ行こーか!」
気を使ったのか、手を離して
代わりに自分のパーカーの裾を握らせた。
時々振り返って笑う顔は、もう…誰にも見せたくないなんて思った。
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