「パパァ!水槽に変な子が沈んでいるよ」
朝早く、ひかるの声に洋一は飛び起きた。
気絶しかかる美知子を抱きかかえて、洋一は水槽を叩いた。
「何をやっているんだコク君!?」
コクは水中でゆっくりと目を開けた。
「ああ、おじさんおはよう。居間の長椅子は寝にくくてここに移ったんだ。大丈夫、彼らの了解は得ているよ。狭いついでだってさ」
コクは水面に顔を出してそう言った。
「あなた、お魚とお話できるの?」
ひかるが洋一の前に歩み出て目を輝かせた。
「もちろん・・・君は誰?」
コクはひかるを凝視した。そしてみるみる赤くなった。
「わぁっ、ゆでダコみたい!・・・あたしは南田ひかる8歳だよ!」
「ひかる!僕のお嫁さんになって!!一緒に海底で暮らそう!」
コクは水槽から飛び出すと、ひかるの両手を取って言った。
「カイテイってどこ?」
ひかるは、ちんぷんかんぷんという顔をした。
「さあさあ、コク君もひかるも食事でもしながら話そう」
洋一が割って入った。
彼はもしかすると、ひかるをエサにずっとコクを引き止めることが出来るかも知れないと思い、ほくそ笑んだ。