夜中にトイレに起きた洋一は、垣根越しのジャックのプールで誰かが水音を立てているのに気づいた。



「誰だ?今じぶんプールで泳いでいるのは?確かお隣さんはワシントンに行って留守のはずだ。まさか泥棒・・・はプールで泳いだりしないか」



洋一は裏口のドアを開けた。



「こんばんわ!ジャックさん?ハクはどこ?」



「わーっ!河童だぁ!」


洋一は頭に皿を乗せた、ずぶ濡れの少年を見て叫んだ。



「カッパ?誰ですかそれ?僕はコクといいます」


コクはプールの中でウォーターキャップを取って、洋一に挨拶をした。



「ああ驚いた。水泳帽だったのか。・・・残念ながら、ミラーさん一家は留守だよ。したがってハクとかいう子もいないね」


洋一はあくびを噛み噛みそう言った。



「困ったなぁ、じゃあいつ帰るかとか知りませんか?」



「数日は帰らないだろうね。お気の毒だけど」



「おじさん、僕をおじさんの家に置いてくれませんか?ハクが戻るまで」


コクはプールの中から洋一に頼んだ。



「そんなこと言っても君、どこの誰かもわからない、ましてや子供を親ごさんの承諾も無しに預かれないよ」



「それもそうですね。じゃあ出直すとしよう。その前にウォーターキャップに水を蓄えないといけないな」



コクは再びキャップを被ると、ものすごいスピードで泳ぎ始めた。