その時ジャックの体に何かが巻きついた。



車のシートベルトだった。



ベルトは外れない。



このままでは溺れてしまう。



『溺れる?』



ジャック・ミラーの辞書には無い言葉だ。



彼は落ち着いてベルトを外した。



水中でベルトを外すと、ジャックは水面に向けて腕を大きくかいた。



水面に顔を出すと、そこは故郷イリノイを流れる大河だった。



大雨の後の川は水かさが随分と増していた。



何度も濁流に飲み込まれながらジャックはどうにか息継ぎをした。



流れに押し出された先の目の前は大西洋だった。



大きな波がうねりながら襲ってくる。



そしてジャックの目に、波間を漂っている息子の姿が見えた。



「ジュニア!!」