( 新撰組 * 恋情録 )


 ―‥だけど。

 もちろんここに来たばかりのあたしは、
 お風呂の場所なんてわかる訳がなくて。

 「 あれ‥?ここ何処?! 」

 ( ‥‥‥うわ―んっ!! )

 そう、あたしは完全に
 迷ってしまっていた。

 ( 道場に戻る道も わからなく
    なっちゃった‥どうしよう‥! )

 途方に暮れてしゃがみ込んでいると
 何処からか聞き慣れた声がした。

 「 凜咲!聞こえるなら返事しやがれ! 」

 ( この声‥土方さんだ! )

 「 こっちです!大きな部屋の前に居ます! 」

 わかった、という声が聞こえたかと
 思うと すぐに土方さんが現れた。

 「 土方さん‥っ 」

 「 この馬鹿!場所も知らねぇくせに
      飛び出してんじゃねぇよ! 」

 返ってきたのは 罵声だったけど、
 その声には 不思議な温かみがあった。

 「 ごめんなさい‥っ 」

 「 ったく‥ 」

 苦笑してあたしの頭を
 軽く撫でたあと、

 「 風呂、こっちだから。
         ちゃんと道覚えろよ 」

 そう言って歩き始める土方さんの背中を
 あたしは暫く見つめていた―‥