( 新撰組 * 恋情録 )


 「 こんな所に座り込んで何してやがる 」

 目の前に立つのは、不機嫌な黒い影。

 「 また体調崩してんじゃねぇだろうな 」

 「 ‥違いますよ 」

 俺はまた嘘を吐く。





 「 安心したら力が抜けて、
  立てなくなっちゃっただけです。
  ‥‥凜咲、目を覚ましましたから 」

 「 ! 」





 途端に変わる、黒い影の表情。





 「 っ‥馬鹿野郎、早く言いやがれ! 」





 脇の下に手を入れ 一瞬で俺を
 立ち上がらせると、土方さんは
 さながら鬼のような速度で
 廊下を駆けて行った。



 「 ‥ちゃんと俺の事も立たせてから
  行くところが、土方さんらしいよね 」



 廊下の向こうからは、既に二人の
 話し声が聞こえてきて。