「でも…………どれで、伝えたらいいか。」
「一緒に、居る。」
深は、今までよりもずっと優しく笑ってみせた。
「優が、今思ってる事をみんなに伝えたらいい。」
「うん。」
いくら、後悔しても今日は、もう返って来ない。

「メール、してみる。」
もうすぐ、日が変わる。
「わかった。とりあえず、皿洗って来る。」
名残惜しそうに、離れた手。

「ありがとう。」
「携帯。」
深は、ポケットから優の携帯を出した。
「ありがとう。忘れてた………。」
「ちゃんと、覚えてろ」
「ごめん。」
温もりのある、言葉。
「洗い物してるから」
深は、お皿の上にコップを二つ重ねて、ペットボトルを持った。
「私、する。」
「いい。考えとけよ」
「ありがとう。」

携帯を開けて、伝えたい言葉を探す。

ため息しか、出て来ない。
「どうしよ………。」
「なんか、いい案出て来たか?」
「全然。」
斜め、後ろで水の音がする。
「深く、考えると詰まるから今思ってる事言わないとな」
「なんか、深さん変だよ?」
「どこが?」
「優し過ぎる。」
自分で言って、恥ずかしくなった。
「最後の、夜だからな。そのくらいしないと。」
洗い物を終えた深が、部屋に入る。