嬉しくて、ついにやけてしまう。
「そんなに、嬉しいか?」
「嬉しい、です。だって、私はそれだけで頑張れるんですから」
少し恥ずかしくなって、深を見る事をやめた。
そばに置いておいた、コップを目の前に持ってくると両手で包んだ。
「あたし、不安だったんです。いろいろ、ありすぎて。」
「うん、」
「引っ越しとか、学校とか。不安、ばっかりで………。」
少し、目にたまる涙。
「っ………。」
深は、そっとコップから手を外して握った。
大丈夫だよ、というように
優は、言葉を探す。
「………さよなら、いいそびれちゃった。」
「なんで?」
「多分、辛かったんだと思う。さよならが、嫌で言いたくなかった。」
ぎゅっと、強く握られた手。
「離れたく、無い。」
勝手に、滑り落ちた涙。
手に、はらりと流れ落ちる。
「言えない、事がこんなに辛いなんて思わなかった。」
「優……」
「言えば、良かったなんて今さらだよね。」
キュッと、唇を噛み締めた。
自分が、情けなくて。
「遅くなんてないよ。」
「えっ……。」
優は、顔を上げた。
深の、優しい顔がそこにあった。
「直接が、無理ならメールがある。手紙もある。後悔しないためにも、伝えなきゃ。」