―見ている景色を、切り取るように今を撮りたい。

良子が、ずっと前から思っていた事。
カメラを肩にかけたその時から、ずっと毎日。
それを今日、形にする。

―こんな写真、オレでも撮れる
―クォリティが低すぎ
そう言った人達を見返すために。

―良子の写真に、夢が見える

そう言ってくれた風花のために。

今日が、勝負。

「良子?」
「ん~?」
そっと、優が側に来て風花と言った。

振り向くと、女子校の制服を脱いで、女子大生のような格好をした風花が、急ぎ足で走って来た。

「ごめ~ん~。遅くなった。」

ブレザーと制服を入れたカバンを持って、走足元はローファーからパンプスへと変わっている。

「けっこうな荷物やったんちゃう?」
風花は、カバンを受け取る。
「そうでもないよ。」

キラキラと光る宝石のように、少し顔を出した太陽が風花を照らす。

「化粧する?」
「う~んどうしようかな?」

風花が、カバンからじゃらリと音をさせて携帯を出すしぐさがキレイに見えた。

ふっと、イメージが浮かぶ。

繊細な表情をした風花が、古びた壁をバックに携帯をかけて笑っている。

多分、路地裏。