「知ってる。」

少し、ふてくされたように笑うと肩からカメラを下げた。

「また撮らしてよ。」
「えっ、絶対イヤ。」
即答した。
「ちょっと~。即答とか、若干傷つくねんですけど~?」
「ごめん。」
「いいよ。いつもの事やし。」
少し寂しそうに、良子は笑った。
「それより、風花は?」
「もうすぐ来ると思う。」

ブランコにから降りて、砂を弄る。
若干、白くなるローファー。

「子どもみたいやで」
「知ってる。」

優の肩越しに、静かな町並みをカメラに収めた。

カシャッ。

手に収まっているのは、誰かの夢に繋ながる道具。
今を切り取る、小さな思い出の形。
そう誰かが言っていた気がした。

(きっと、葵先生。旦那さんの受け売りとか言ってたかな?)

ふっと笑うと、そっとカメラを下ろして前を見据える。

(今日は、大丈夫。絶対、大丈夫。)

「良子?」
不安そうな優の声がして、はっと思った。
「大丈夫?」
「大丈夫。」

ゆっくりと深呼吸をして、気持ちを整えた。
「優。今日も、風花をお願いね。」
「任しといてよ。良子とだったら負ける気しない。」
「頼りにしてるよ。」
やっぱり、良子は喋ってよかったと思う。