「ちょっと、深さん。」
「なんだ?」
全く、何もなかったように振る舞う。
「電話、」
「ちょっとは、構ってくれてもいいだろ?」
少し、年上のはず。その割には、幼い。
(私よりも、子どもなんだから)
『もしもし、優?』
「何?」
『朝の、公園でいい?』
「いいよ。」
『じゃあ、あとで。ブランコの所に居るね。』
わかった、と言って電話を切った。
「公園、て」
「桜木公園。」
ゆっくり、立ち上がると鞄を持つ。
「制服、持って帰んなきゃ。」
深と並んで、タンスの前に立った。
「どうする、帰って来る?」
時間を考えると、遅くなる。
「お風呂したしな……。」
「いいよ、風呂ぐらい」
洋服を、鞄に詰める。
「優ん家、泊まるから」
「わかった。」
制服を、綺麗に畳んで鞄に入れた。
と、思い出すのは朝の自分の部屋。
「ねぇ、」
「なんだ?」
すっかり、泊まる用意を鞄に入れてタンスを閉めた。
「部屋、汚い。」
「いいよ。お前が、構ってくれれば」
でも、と言って反論しようとすれば首を振られた。
「一緒に、居れればいいから」
二回、頭を軽くポンポンと叩く。
「行くぞ」
「うん」
忘れ物は無いか見渡した。
「ローファー持ってくしな。」