「この道、通った?」
「優、寝てただろ?」
「うん……。」
通りで、知らないはずだ。
「かわいかったなぁ寝顔。」
「ごめんなさい……。」
久々の、散歩。
少なからず、通る車はそんなに早く走ってはいない。
怖くないのは、きっと深が隣に居るから。
「優、」
「何?」
「あのさ、話しって、いい話し?悪い話し?」
「悪い、話し。」
ほんの少し、歩いただけ。
「帰ろっか。」
「うん。」
そっと、また手を強く握った。
いつもの交差点で、マンションの方を向いた。
「携帯、光ってる。」
「ありがとう。」
着信、の文字。
(誰からだろ……。)
履歴を見ると、親からだった。
電話をかけ直そうとしたら、メールが来る。
「ちょっと、待って」
自然と、離れた手。
『予定早まったから、明日の五時過ぎにマンション迎えに行く。荷物、まとめといて。』
引っ越しは、明後日だったはず。
まだ、一緒に居れたはず。
通話ボタンを押すとぎゅっと、唇を噛み締めた。
『もしもし』
「どういう事?」
『早く来いって言われたから』
「明後日って……。」
『いいからそうして。じゃあね』
「ちょっ、」
一方的に、切られた電話。歯がゆくて仕方ない。
(最悪……。)