さすが怜だ。ちゃんと、わかってくれている。
「ありがとう」
「純一郎」
と、まっすぐ目線を合わせる。
「優をよろしくね。私、まだ用意あるから。」
「わかった。」
「出来たら、メールしてね。取りに行くから。」
「ごめんね。」
「ううん大丈夫。」
じゃあねと言って、怜は教室へと続く廊下を歩いていった。

行くか?と、残されたミシンを持って、純一郎は優に聞いた。
小さく頷いて、職員室へ向かう。

「部屋って何処だと思う?」
「多分、保健室か相談室みたいなのがあるからそこじゃないかと思う。」
広くて、吹き抜けている職員室の廊下は朝と代わりなく同じ景色だった。

「あらっ。大川さんに、加瀬君」

職員室から、原口が資料を持って出てきた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「流ちゃん知らない?」
「先生なら多分、事務室に居られるはず。」
「ありがと、先生。」
軽く頭を下げて、行こうとした。
「あっ。大川さん」
「はい。」
「文化祭、無理しないで来てね。」
「ありがとうございます。」

軽く、会釈をしてまた純一郎と並んで歩く。
「明日、これそうか?」
「多分、行く。」
最後だからという言葉を飲み込んで