珪に押し退けられた
あたしは床に尻もちを
ついて、呆然とその様子を
見てることしかできなかった。




珪の体に半分隠れた
お兄ちゃんの顔があたしを
見て、必死に右の指先を
伸ばしてくる。




あたしは無意識のうちに
その指先をつかんでた。




「すまなかった……紗耶……」




最後に囁くようにそう言って。




お兄ちゃんはゆっくりと、
その瞳を閉じた――…。






       ***



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