……その時のあたしには、
知りようもなかったんだ。




自分が今立っている
螺旋が、どんな所なのかなんて。






――クルクル、クルクル。




まわり続ける、出口のない迷路。




そこに迷い込んだ、複数の
想いが。




決して絡み合わないまま
一カ所に集中してた事を、
あたしは知らなかった。





――薄暗い廊下で。




足音を殺して逃げ去る
気配があったことなんて、
これっぽっちも気づいては
いなかった――…。







       ***



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