「杏?」 しばらくして、大好きな人の声が聞こえた。 「……健太」 わたしの目の前にいる大好きな人。 大人になったはずなのに、ここにいると、高校生の健太と錯覚させる。 「久しぶりだな。元気してたか?」 「うん……」 健太の声が、息使いがうれしくて笑顔になる。 「いつ……帰ってきた?」 「2週間前。まだついこの間だよ」 「そっか……向こうで頑張ってたんだな」 「うん……」 見つめる健太の目がとても優しくて出そうになる涙を必死でこらえる。