「彼……女?」 健太がわたしから目を離さずにいた。 健太はわたしだって分かってる? 「そ、彼女。な、杏」 改めて悠ちゃんにそう言われてハッとした。 「杏……」 健太が確認するようにわたしを呼ぶ。 あの頃より少し低くなった声。 大人になった健太の声が心に響く。 わたしだって気づいてるよね? 見つめられてる視線が痛い。 でも…… 目が離せないのはもっと健太を見ていたいから。 まだ、心のどこかで健太のことを忘れられていないから……。