誰よりも、君がすき。


「智子、チャイム鳴るよ」

12をさしかけた時計の
針に芹沢は智子に自分の席に
戻るよう促す。


「あ、ホント。じゃあまた
来るから」

スキップしながら芹沢に
手をふる智子。


私は座りなれているはずの
席に。

芹沢の隣の席に。

ぎこちなく腰を下ろした。

「前の色のほうが好きだった?」

甘くて低い声で私の
耳元に囁く芹沢。

...やめて。

私に関わらないほうが
いいって言ったのは芹沢の
方じゃない。

「別に。似合ってると思うよ」

「嘘。」

え...

その言葉に振り向かずには
いられなかった。

優しく笑う芹沢を
私はただ見つめた。

「“昔のほうがよかったな”
って顔してた。」

...っ

「そう?確かに私はあの
金色の髪の毛、好きだったけどね」


できるだけ
当たり障りのない返答を返す


心のどこかでブレーキを
かけてたんだ。