誰よりも、君がすき。

「あれから、智子と話、した?」


帰り道、前を歩く
芹沢に追いつき、顔を見上げる。


「...いや、してない」


「ちゃんと、話しなよ。
智子、傷ついてたみたいだから。」


「優しいな」


フッと笑みをこぼす。
同時に前髪が風になびいた。


「あんなこと言われても
井原ちゃんのこと、気遣って。
お前、優しすぎるよ。」


“井原ちゃん”


久しぶりに芹沢の口から
聞いたその名前になんだか
妙な安心感を覚えた。


「そんなこと、ないよ」