どこかで見たことある。



そう思いつつも警戒心はとけない。



「そんな警戒しなくても……傷つく…」



さらりと言いのける“傷つく”という言葉に少し反応してしまう。



「ごめっ…」

「俺、一応あの中にいたんだけど…覚えてない?」



だから見たことあると思ったんだ。



ようやくここで繋がった。



名前までは覚えてないけど…。



「あ、覚えてる」



そう言うあたしに、少し口角をあげる。



その姿は妖艶で、ぞっとするくらいに綺麗。



「そう…名前、覚えてる?」

「そこまでは覚えてない」

「泉 美岬(イズミミサキ)」

「泉くんね…」

「美岬でいい」

「わかった…」



待ってよ、あたしなんで普通に接してんの?



どんどんこの人のペースにのせられていく。



巻き込まれてく。



なに……。



こんなの初めて。



「で、帰るの?」

「うん…」



そういって、別れを告げようとしたあたし。



だけど…、そんな言葉が出る前に美岬が話をする。



「…ならさ、ちょっと一緒にどっか行こ……?…どうせ予定ないでしょ?」



全てを見透かすような瞳で、ジッと見られる。