翼と別れ、夕暮れの中の家路を歩く。
ただふたりで手を繋ぎ、歩くだけで幸せだと感じる。
「花恋。俺が翼に『別れよう』って言えないって言ったから、花恋が言いに行ったの?」
「そうだよ。だから、直輝は『別れよう』って言わなくて済んだでしょ?」
「まぁね…」
これが花恋の優しさ。
素直に感謝するよ。
やり方が、実に花恋らしい。
「ありがと」
それだけを言うと、花恋はニヒっと子供みたいに笑った。
この笑顔にどれだけ助けられただろう。
だけれど…反対に
この笑顔にどれだけ苦しめれただろう。
この笑顔が欲しくて欲しくて…
でも忘れなくちゃいけなかった。
だから、この笑顔に付けた名前は…
『ズルイ笑顔』
俺だけに…この笑顔を見せてね…?
「うちね。廊下を直輝と歩きたい!お弁当も作ってあげるよ!あとはねぇ…」
繋いでない方の手を口に当て、考えている。
考えているときは、口に手を当てるのが花恋のクセだ。
嘘をつくときは、瞬きを3回するのが花恋のクセだ。
花恋のクセを知っているのは、俺だけ。
それを思うと
胸の奥がくすぐったくなった。
「あっ!!うち、学校行けるんだよ!!直輝のおかげで…」
「花恋」
花恋の言葉を遮って、その名を呼ぶ。

