「ふたりとも、頭を上げて下さいよっ!」



慌てるよう両手を左右に揺らし、言う。



「話を分かってもらえたので良かったです」



「短い間でしたが、ありがとうございました。本当にお世話になりました」



とママはまた少しだけ頭を下げた。




「ありがとーございました」



棒読みになったけど、一応うちのお礼の言葉。




「いやいや、こちらこそありがとうございました。それじゃあ、話は以上です」




立ち上がってムカツク笑みを見せた校長。



どーせ、いなくなって良かったとか思ってんだろ…?




「はい…ありがとうございました。失礼します」



それだけを言って、うちとママは校長室を出た。




「今日のご飯は、何がいいかなぁ~?」



ママが息をひとつ吐き発した言葉はそれだった。



出たよ。


そのセリフ。




これを言った時は何かを隠している時なんだ。




だからママ…


自分の気持ち、隠しているんでしょう…?




「早く、帰ろっ?」



ごめんとか、しんみりする言葉をここで言うと重い空気になって。


ママ…泣いちゃうんじゃないかな…?



だから、あえて明るい言葉で。


笑って言って。




「いいの?学校見なくて。最後なのに」



心配をするような声で訊いてきた。



本当は見たかったけど、いろいろ思い出してしまって、泣いてしまうんじゃないかと思いやめた。



「んーー…いいや」



「あそう。じゃあ、行く?」



「うん。あ、今日はオムライスが食べたい!」



「分かった。作るね」



そんなことを話ながら廊下を歩いた。




………今日で最後…だ。



もう、みんなと一緒にこの廊下を歩けないんだなぁ----。