花恋の手にそっと颯さんのケータイを差し出した。
「落ち着いたらでいいから。見てあげて。最後のメール、花恋ちゃん宛てだから」
「あ、ありがとう…ございます」
やっとの思いで言葉を発す。
無表情ま顔を浮かべているのに、真っ直ぐな瞳でお父さんを捕らえた。
「お父さんは、颯のこと…好きです…か?」
「ははっ。なんだよ、花恋ちゃん。急に」
「颯と仲悪いって聞いたんで…。颯が、お父さんは俺のことが嫌いだと…言っていました」
「そんなこと思っていたんか…アイツは。俺は、ダメな父親だなぁ~。2度も交通事故で家族を失くして…本当に、後悔しているよ。母さんの最期に立ち会えなったこと。それで、颯との仲も悪くなって…今日まで会話らしい会話なんかしてないんだよ?それなのに…颯は…」
颯さんのお父さんは、俯き、目からはじわじわと涙が溢れ出した。
「お父さん…颯のこと…」
「あいつは、俺の自慢なんだ…自慢の息子だった…そばにいてくれて、ありがとう。花恋ちゃん」
その言葉が俺の心にも響いた。
「花恋ちゃん。颯が“花恋に愛してるって言いてぇーなぁ。てか、早く会いてぇ…”って言ってたよ。これが颯の最期の言葉だった…」
「そうなん…ですか…!?お父さん…颯をありがとうございます。本当に、逢えて…よかった…」
このふたりを見ていると、颯さんの存在の大きさを実感した。
でも、その大きい存在は一瞬にして…
なくなった…