「小松ちゃんさ、入社試験の時に左京に会ってるの。覚えてない?」

……………え?

「ど、どういう……」

「試験の前、誰かと話しなかった?左京はちゃーんと覚えてたよ。だからこの支社に異動になって、初日に小松ちゃん見つけて」

「―――あっ!」

思い出した。

私は櫻井さんを遮るように声を上げる。

「…思い出したのね」

その言葉に、興奮しながら私は頷いた。

「―――そのときから、左近は“女神様”に夢中なんだって。忘れられなかったんだって。……まあ、あとは左近に聞きな。お疲れさん」

意味ありげに笑い、資料室をあとにする櫻井さん。

私は再び一人で、その日のことを思い返していた。