その真剣な声色に、私は顔を上げて間部主任を見つめた。


会社でなら適当にごまかせる。

けれど、今はプライベート。
それに、ごまかせる雰囲気でもない。

「…わかりません」

私は、ぽつりとそう漏らした。

「―――私は、コンプレックスの塊なんです。そんな私に、間部主任は眩しすぎるんです。…教えください。どうして――…」

どうして私なんですか?

どうして私なんかにそんなことを言うんですか?



「…車に戻ろうか」

今にも泣き出してしまいそうな私に、主任は穏やかにそう告げた。

店に入ったときと同じように、二人の指を絡めながら、私たちは店をあとにした。