それから数分車を走らせ、私たちは一軒のイタリアンレストランの前に到着した。


「さ、着いたよ」

間部主任にそう促され、私は車を降りた。

「こっち。おいで」

そう言い、主任は私の手を取り歩き出した。

今日だけで何回も手を握られている私だが、何回そうされても慣れることはない。
そのたびに心臓がうるさくなることを、主任はわかっていてやってるんだろうか?

絡めた指があまりに熱くて、くらくらしてしまいそうだった。


「いらっしゃいませ」

絞った照明が大人っぽい雰囲気を醸し出している。

私たちは奥まった席に案内され、向かい合わせに座った。