「怒ったほうがいいよ。俺は強引なほうだから」

そう言い、主任は信号で車が停まった隙につないだ私の手を自分の唇に寄せる。

車のヘッドライトに照らされ、主任の表情が一瞬だけ見えた。
熱を帯びた鋭いまなざしが私を捉えて離さない。


「は、離してください!」

「了解しました」

あっさりと離してもらった右手には、唇の感触が残っている。
と同時に、初めて感じるような痺れのようなものを感じた。


車は再び動き出し、主任は再び運転に専念した。

早く着いてほしい。
私はそれを願っていた。