右も左も、上も下も、常識も非常識も、善も悪もない

そんなものは虚構に過ぎない

だれかが創り出し、だれかがそれを広め、当たり前としただけの物に過ぎない



幸春は、私の罪を肯定した。

だけどそんなものは幻想に過ぎないとも言った。

組織の中で、ただ人を殺す道具として扱われていた私を、唯一人間と認めた。

ううん。幸春にとって、人間という括りはないものなのかもしれない。

人は、人。

誰とも相容れない、孤独な個人。

大きなくくりでまとめることが間違っているんだと、幸春は言った。