「綾…斗…お兄ちゃん…。」 「美結…。」 綾斗お兄ちゃんが、立っていた。 「た、ただいまっ…」 「…おかえり。」 ――綾斗お兄ちゃんが…恐い。 お兄ちゃんに初めて抱く感情。 買い物帰りの出来事が、今になって頭の中を巡る。 「じ、じゃああたし行くねっ」 この空気、嫌だ。 耐えられない…! あたしは、綾斗お兄ちゃんの横をすり抜けてリビングへ向かった。 …綾斗お兄ちゃんと目を合わせないように――。