やっとの思いで辿り着いた保健室。
そのドアに指をかけて、走ってきたままの勢いで開け放った。
ガラッ!と、派手な音を立てて開いたドアの向こう。
一番奥の白いカーテンが、揺れているのが見えた。
後ろ手にドアを閉めて、息も整えない内に、その揺れるカーテンを目指してた。
「……あら?」
カーテンに手を伸ばそうとした瞬間。
突然開いたカーテンから、手嶋先生の顔がのぞいた。
目が合わないはずがなくて、あたしも先生も驚いて立ち止まった。
「あらあら、朝倉さんじゃないの~。どうしたの?」
「…え、っとー……」
「なんだかものすごく疲れてるみたいね~。走ってきたの?」
「…あー、っとー……」
「あ、そうね~桜井くんね~」
手嶋先生のゆったりした喋り方と、ここに来た目的を簡単に言い当てられてしまった気恥ずかしさとで、なんとも言えない微妙な心境になってしまった。
自分なにやってんだろーみたいな。
あたしバカじゃないのーっていう。
だけど先生は、理由も何も聞かずに、カーテンの入り口を開けてくれた。
「どうぞ~」と、招かれた先には、変わらない寝顔があった。


