椅子を蹴倒す、耳をつんざくような大きな音が、教室中に響き渡った。
それが自分の立てた音だとわかったのは、数秒後。
あたしはいつの間にか立ち上がっていた。
立ち上がって、担任と思われる先生に抱き起されている春人を見下ろしてた。
そのまま連れて行かれる場所はわかってる。
保健室の、一番奥のベッド。
高校でもさ、もうそこ指定席にしちゃえよ、このバカ。
「あ、朝倉?いきなりどうしたん…」
「スーさん」
「先生と呼びなさい。」
「スーさんセンセー」
「もうなんでもいいけんとりあえず座ってくれ」
「断る。」
「お前なあ…」
「ちょっとおなかが痛くなってきたので保健室行ってきます」
「さっき腹の虫鳴りよったんは誰や」
「あたしです。」
「真剣健康体やろうがお前は!」
「あ、スーさーん。キョウちゃんあれなんですよ。女子の日のアレ☆」
キュルン(ハート)みたいな言い方で、教室右側の方から、未来さんがまさかの助け船を出してくれた。
女子の日のアレと言えばアレしかない。
鈴木のスーさんもそれくらいは理解しているらしく。


