背中を丸めて教壇に戻って行くスーさん先生をお見送りつつ、もう一度窓の外へと視線を向ける。
「キョウちゃんマジぱねぇ(笑)」とか「スーさんマジがんばれ(笑)」とかいう声が教室の中で飛び交う。
別にあたしぱなくねぇしっつーかクラスメイトにまで“キョウちゃん”浸透してんのかよ誰か京って呼べよちょっとねぇ呼んでよむしろ呼んでください。
まあ“姉御”が流行った時期よりマシかと思いながら、グラウンドで動き回る1年生の中から華奢な姿を探す。
あ、発見。まだ内野に居るし春人サンてば。
さっきボールを取ったのはどうやらまぐれじゃなかったようで、今まさに、投げられたボールをキャッチしてた。
キャッチしてすぐに相手陣地に思い切り投げ返す。
残像だと。
かなりのスピードで投げ返されたボールは誰にも取れなくて、そのまま外野に回った。
あれはホントに春人なのか。
だって、ねぇ?
あたしが知ってる春人は、絶対あんなボール取れないし、ましてやあんなスピードで投げ返すなんてとうていできない。
っていうか、まず体育に参加できない。
調子がいいからって参加すると、すぐにぶっ倒れる羽目になる。
でも今、あたしが見下ろす眼下のグラウンドには、見慣れた春人の姿がある。
完全に体育に参加してる。クラスメイトと楽しそうに笑い合っている。
もう確信しかない。
あれは絶対春人じゃない。


