――ピーッ、ピーッ!



無機質な電子音が聞こえた気がした。

思わず立ち止まった。


「……ってことだからー…って、キョウちゃん聞いてる?」


隣を歩いていた未来さんが、立ち止まったあたしに気がついて振り向く。

あたしは辺りをぐるりと見渡した。


「……なんか今電子音聞こえなかったか。」

「え、電子音?なにそれ意味不」

「携帯の充電切れみたいな。」

「……えー?」


怪訝そうな表情を浮かべ、未来さんはしばらくまぶたを閉じて耳をすます。

しかし、少ししてから首を振った。


「ぜんっぜん聞こえない」

「えー。」

「っていうか早くしないと卒業式遅れるからホントキョウちゃんが不良に絡まれてる女の子助けたせいでガッツリ遅刻フラグだからねわかってんのかおいコラキョウコ。」

「実にすまんかった。」

「健気に待ってたあたしって超偉くなーい?」

「あーうんそうだねエライエライ。」


アッパー食らわされかけたので避けた。アブネー。

そんな恐ろしい未来さんに引っ張られつつ学校への道を歩いていると、前方に見知った後姿を発見した。

あたりをきょろきょろ見回している。

今日も今日とて飼い主を探す犬のような…いやなんでもない。