「なーにため息ついてんのよーう」
つんっと鼻先をつつかれて、あたしは視線だけを持ち上げる。
いつの間にかHRの終わった教室内はざわざわとしていて、あたしの前の席じゃないはずの未来が、何故か目の前の椅子に後ろ向きに座っていた。
あたしの机に頬杖をついて、いつまでも黙っているあたしの鼻先を容赦なくつんつんしてくる。
「キョウちゃんて黙ってればあれだよね、可愛いよね」
「お前に言われたくないよね。」
「え、なに?それってあたしが可愛いってこと?存じております!」
「未来さんの前向きさには感心するよね。主に呆れ的な意味で。」
鼻を思いっきり押し潰されました。
「そのまま顔面が全部中心に埋まって行けばいいのよ。」
「もはや人間には成せないワザだな。」
「せめて鼻だけ陥没しろ。」
「おいやめろ。」
何が“せめて”なのかわからないがしかし鼻を陥没させるのは本気らしかったので、あたしは椅子ごと後ろに下がってそれを回避した。
鼻が低くなった気がするので引っ張ってみる。
未来がによによして見てやがったのでやめたけど。
低くなっててもどうでもいいかー別に誰も見てやしねーよあたしの鼻なんかさー息ができりゃいいのよそれでー。
とかすべてに置いて投げやりになりつつあるあたし。いつもか。


