ノアは右手だけであたしを抱きしめている。
もう少しで、この右手も力を失う。
けれど彼の声は、いつまでも、おだやかだ。
「…あと、言い残したこと。」
「……うん…」
「“みんな大好きだから”」
「……そんなのもう、みんな知ってる」
「……そっか。」
「でも伝えとく」
「うん。」
「……みんなも、ノアのこと、大好きだからね」
「……うん、知ってる。」
アンドロイドも、人間も、関係ない。
春人も、未来も、お父さんもお母さんも、泉も、春人の両親も、クラスメイトも、みんな。
みんなノアが、大好きだ。
それだけは、覚えておいてね。
忘れるだろうけど。
刻んでおいて。
「……それと、これも言ってなかった。」
「……なに…?」
「一番大事なこと。」
あたしを右手で抱きしめたまま、ノアはすっと、あたしの耳元に唇を寄せた。
そうして、囁く一言。
「……――ミャーコのこと、大好き。」
大嫌い、じゃない。
大好き。


