時間がない。
言いたいことを言ってしまわなきゃならない。
なのに言葉が上手く出て来ない。
喉に詰まって出てきてくれない。
時間がない。
時間がないのに。
「……ミャーコ。」
ノアの声があたしを呼ぶ。
あたしに似合わないあだ名で呼ぶ。
最初は違和感ばかりだったそのあだ名も、いつも呼ばれている内に、日常になっていた。
あたしの耳に、やっと浸透してきたそのあだ名も。
きっともう、聞けなくなるのだ。
「……ミャーコ。」
「……うん…」
「あの時は、ミャーコが俺に助けてって言ってくれたから、俺は助けに行ったんだよ。」
「……うん…」
「だから、今度助けて欲しい時は、ハルとか、未来とか、クラスメイトとか、泉とか、ミャーコが助けてって言えば、絶対助けてくれるから。」
「…………」
「ハルもきっと、もう俺が居なくても大丈夫だよ。」
「……大丈夫じゃない…」
「大丈夫。」
「大丈夫じゃないっ!」
思い切り否定した。
首を横に何度も振った。
ダダをこねているようだった。
大丈夫じゃない。
大丈夫なんて言ったら、ノアの存在理由がもう、なくなってしまう。


