あたしはしゃがんでその顔を覗き込んだ。
ムスッと、していた。
思えばこうやって、表情がある程度顔に出るようになったのも、みんなと一緒に過ごしたおかげかもしれない。
一緒に居すぎて、気が付かなかったけれど。
ノアはこんなに、“人”だったんだ。
「……あのさ、ノア。」
「……ん。」
ムスッとしたまま、ノアは受け答えをする。
「……ホントは、いろいろ話したいことがあったんだけどね。」
「……うん。」
「ノアの顔見たらわかんなくなったわ。」
「……なにそれ。」
「だって時間が限られてるでしょ。」
「……うん。」
「そしたら、何言っていいかわかんなくなって。」
「……うん。」
「……ねえ、何話したらいいかな。」
若干、すがるように尋ねた。
ノアは天井へと視線を投げた。
沈黙が降り、機械の音だけが聞こえる。
しばらく考えてから、ノアは「じゃあ」と。
「じゃあ、今まで言わなかったこと、言うとか。」
「……なんだそれ。」
「思い出話ししよう。」
「…………。思い出?」
「うん。だって、俺はもう、あと少ししたら、全部忘れちゃうから。」
ノアは目を細めて、そう言った。


