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ドアを潜ると、そこには誰も居なかった。
よくわからない機械がたくさん置かれている部屋で、人間で言う集中治療室のような場所だった。
あたしは足を進める。
ゆっくりと歩き、置かれた硬そうなベッドの角を曲がると、見覚えのある姿が、床に座っているのを見つけた。
壁に寄り掛かっている。
あえてこういう、“いつも通り”にしてくれたのかもしれない。
あたしは一度だけ立ち止まった足を、彼の方へと向けた。
ゆっくりと、歩み寄る。
目の前で足を止め、そして、見下ろす。
「……ヘタレロイド、起きろ。」
いつもの口調で声をかけると、ヘタレロイド、ノアは瞼を持ち上げた。
それからゆるりと頭を持ち上げ、あたしを見た。
「……ミャーコ…?」
眼鏡はかけていなかった。
いつものノアだった。
……あぁ、ノアだ。
「……うん、あたしです。」
「…なんで居んの。」
「ちょっとね、いろいろと。時間貰って話したいことがあって。」
「……もう聞いたんでしょ、全部。」
「聞いたよ。あんたの記憶データがほぼあたしということも聞かせてもらった。」
「……サイアク。」
吐き捨てて、ノアはそっぽを向いた。


